お悩み別解説
Case Commentary
2026年7月9日 木曜日
グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)とは?|スポーツ選手に多い股関節・鼠径部の痛みを専門的に解説
スポーツをされている方で股関節の痛みでお悩みの方へ
鼠径部が痛い
キックすると股関節の付け根が痛む
休むと楽になるが運動すると再発する
このような股関節前側の症状は、グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)の可能性があります。
サッカー、フットサル、ラグビー、陸上など、ダッシュやキック動作、方向転換を繰り返すスポーツ選手に多くみられる症状です。
サッカーでは特にDFやGKなどロングキックが多い選手に多く見られます。
Contents
グロインペイン症候群は「病名」ではなく「症候群」
グロインペイン症候群(Groin Pain Syndrome)は、鼠径部や股関節周囲に起こる慢性的な痛みの総称です。つまり、
ひとつの病気を指す言葉ではなく、さまざまな原因が重なって起こる状態をまとめて呼んでいます。
関係することが多い組織には、次のようなものがあります。
内転筋(太ももの内側の筋肉)
腸腰筋(股関節を曲げる筋肉)
鼠径部周囲の組織(スポーツヘルニアを含む)
恥骨結合(骨盤の前面の関節
股関節そのもの(FAI・関節唇損傷など)
現在主流となっているグロインペインの分類
2015年の研究では、鼠径部痛は主に以下のように分類されています。1. 内転筋関連グロインペイン(Adductor-related)
最も多いタイプで、太ももの内側に痛みが出ます。内転筋を押すと痛い 脚を閉じる動作で痛い キックやダッシュで悪化しやすい
2. 腸腰筋関連グロインペイン(Iliopsoas-related)
股関節の前面に痛みが出るタイプです。股関節を曲げると痛い ダッシュの加速時に痛い 太ももを持ち上げる動作で違和感が出る
3. 鼠径部関連グロインペイン(Inguinal-related)
いわゆる「スポーツヘルニア」を含むタイプです。鼠径部に鋭い痛みがある 咳・くしゃみ・腹圧で痛みが増す 方向転換や急停止で痛みが出る
4. 恥骨関連グロインペイン(Pubic-related)
恥骨結合周囲に痛みが出るタイプです。骨盤前面の中央付近が痛い ランニングで悪化しやすい 両側に痛みが広がることもある
5. 股関節由来のグロインペイン(Hip-related)
股関節の構造的な問題が関与しているケースです。代表的なものに、FAI(股関節インピンジメント症候群)や関節唇損傷があります。
見逃されやすい「股関節の硬さ」とFAI
股関節の硬さ(可動域制限)近年、グロインペイン症候群の背景に股関節の可動域制限があるケースが注目されています。
グロインペイン症候群は股関節の伸展制限に注目される事が多いですが、内旋制限も確認しなければいけません。
股関節の「内旋(内側にひねる動き)」が硬いと、キックや方向転換のたびに骨盤や内転筋へ負担が集中しやすくなります。
FAI(股関節インピンジメント症候群)
FAI(股関節インピンジメント症候群)は、股関節の骨の形の影響や周辺組織の問題で股関節に衝突や詰まり感を感じます。
その関連痛として鼠径部痛を引き起こすことがあります。
なぜMRIで異常がなくても痛いのか?
グロインペイン症候群はMRIでの検査が実施されることがあります。「組織的には問題がない」
「少し炎症の痕がある程度」
これはグロインペイン症候群で非常によくあるケースです。
ではなぜ痛みがあるのでしょうか?
それは
MRIでもわからないことがあるという事です。
痛みの分類
グロインペイン症候群に限らず痛みの要因は以下の3つに考えられます。
①組織の損傷
筋肉、骨、結合組織などの何らかの組織が損傷し侵害受容器が興奮している状態です。
②神経の問題
末梢神経が絞扼や滑走不全などにより痛みを発している状態。
③脳の問題
不安や心因的な問題から痛みを感じている状態
筋肉、骨、結合組織などの何らかの組織が損傷し侵害受容器が興奮している状態です。
②神経の問題
末梢神経が絞扼や滑走不全などにより痛みを発している状態。
③脳の問題
不安や心因的な問題から痛みを感じている状態
MRIでわからない事
上記した痛みの原因で③の脳の問題である場合はもちろんMRIでは分かりません。その他にも、
①組織の損傷でも筋膜の微細損傷や癒着はMRIでは判断しにくい傾向にあります。
また、
②の神経の問題も大きな部位で問題がある(腰椎椎間板ヘルニアなど)はMRIでわかりますが、末梢になればなるほど分かりにくくなります。
その他にもあくまでも横になり静止した状態での画像になります。
実際、グロインペイン症候群は動いている時に痛みを感じます。
ですから
動いた状況でどのような問題が起こっているかの判断も必要になります。
※MRI検査を否定しているわけではありません。
重要な診断材料になることは確かです。
MRIなどの検査と症状を照らし合わせて冷静な判断が必要だと考えています。
痛みと画像の異常は一致しないことも多い
研究では、痛みがないアスリートでもMRIで腱や関節の変化が見つかることがあります。逆に、画像上大きな異常がなくても強い痛みを感じる人もいます。
つまり、
「MRIで異常がない=問題がない」ではないということです。
大切なのは、画像だけで判断するのではなく総合的に判断する必要があります。
※MRI検査を否定しているわけではありません。
重要な診断材料になることは確かです。
MRIなどの検査と症状を照らし合わせて冷静な判断が必要だと考えています。
なぜグロインペイン症候群は治りにくいのか?
グロインペイン症候群が長引きやすい理由以下の3つが大きく影響すると考えています。1、痛みの原因が一つではない
一つの組織が傷んでるだけでなく複数の組織が傷んでいる場合が多い。
そのため、一つの問題を解除しても、少し違う場所が痛むケースがよくあります。
2、股関節周辺は組織が多く複雑
股関節の周辺は筋肉や結合組織、脂肪組織が多く複雑です。
そのため、
問題の組織を特定し施術するには知識と技術が必要です。
実際、問題の場所をきっちりと施術できていない事で改善が遅れているケースもよく目にします。
3、痛みが出だした頃には組織が複雑化している
グロインペイン症候群のほとんどは一回の衝撃負傷しているわけではありません。
繰り返しの衝撃によって損傷しています。
痛みが出るまでに違和感を感じているケースも多いですが本格的に痛みを感じる頃には組織はかなりのダメージを受けています。
当院での施術及び考え方
フォームや動作改善は二の次
グロインペイン症候群はフォームや動き方の癖を指摘されます。確かに重要ですので否定もしませんし、むしろ行ったほうがいいと私たちは考えます。
しかし、
必ずと言っていいほど「痛んでいる場所」及び「関連部位」に問題は起こっています。
そこを先に改善させる必要があります。
その施術が”痛みをとると同時に動き方やフォームの改善”にもつながります。
炎症や損傷後の癒着などが起こっている場合、
本来の動きをできなくなり関節の軌道は正常な状態から離れてしまいます。
その状態でトレーニングやフォーム改善を行なっても余計に変な癖がついてしまう可能性があります。
大まかなマッサージやストレッチで改善しない
グロインペインの治療でよく選択されるのがマッサージやストレッチそれら自体は悪くありませんが、
かなり深いところや筋肉と筋肉の隙間をかき分けて問題部位をリリースしなければいけません。
股関節以外の周辺関節の調整が必要
ハイパーモビリティと呼ばれますが、問題が起こっている部位は”動き過ぎている”可能性があります。
動きすぎとは本来の構造よりも緩くなっているという事です。
その要因としては周辺の関節の動きが悪くなっている可能性があります。
股関節だけではなく膝関節や仙腸関節、腰椎、胸椎まで視野を広げることが必要です。
問題のある局所の組織改善 → 周辺関節の調整 → 粗大運動・フォームの改善
最悪のパターン
上記した「痛みの分類」で「脳の問題」についてお知らせしました。不安や心因的問題が痛みを感じさせているという問題です。
それ自体は実際起こりうる事だと思います。
グロインペイン症候群の場合、
長期間改善しない事が多いので最終的に「組織は治っているはずなので後はメンタルの問題」とされてしまう事がよくあります。
そうなると、
本人も周りの人も「治らないのは脳の問題、自分の問題なんだ」と考え始めます。
治らない期間が長引けば長引くほどその考えは深まってしまいます。
繰り返しになりますがこのように脳や心因的な問題で痛みが出ることは十分考えられます。
しかし!
本当に組織に問題がないでしょうか?
上記でも説明したようにMRIでは判断仕切れないものもあります。
安静だけでは改善しない痛みもあります。
施術者が改善しきれなかっただけかもしれません。
それなのに「脳の問題」「メンタルの問題」と位置付けられていまっている可能性があります。
人間は一度、信じると、それを書き換える事ができません。
ましてや医師やトレーナー、監督、コーチなど権威がある人に言われると深く刻み込まれてしまいます。
メンタルの問題と断定する前に、まだまだ改善すべき組織の問題があるかもしれません。
まとめ|グロインペイン症候群は慎重に
お伝えしてきたようにグロインペイン症候群は複雑な疾患です。ただ 安静に
マッサージ・ストレッチ
動作改善だけ
このような対策だけではマシになっては再発の永遠ループになってしまうことがほとんどです。
グロインペインが原因で競技を辞めてしまった・・・
という話も少なくありません。
施術家としてそのようなお話を聞くと残念でなりません。
問題が拗れてしまっている場合は正直根気がいることもあります
。
しかし、
当院の過去の症例だけの話になってしまいますが
グロインペインは十分に改善を期待できる疾患です。
メンタルの問題・・・と諦める前に
ー度、ご相談ください。

